歯科口腔・顎顔面外科
診療案内
診療内容・診療方針
歯科口腔・顎顔面外科では口唇、頬粘膜、上下歯槽(歯が植立している部分)、硬口蓋、舌、口腔底、上下顎骨、および耳下腺を除く唾液腺に生じる顎口腔に関連した疾患を治療対象としています。口の中やその周囲に異常を感じたら一刻も早く、かかりつけ医の先生から当科を紹介して戴いてください。
また、大学病院の性格から次の患者さんを優先させて戴いております。
- 紹介状をお持ちの方。
- 紹介状がなくても緊急処置を有する方。たとえば、今激しく痛い、はれている等。
- 病院でないとできない診断、検査、手術等を要する方。
たとえば腫瘍(がんやその疑い)、外傷(けが)、先天・後天的異常(口やあごの変形)。 - 歯科口腔外科以外の病気を併発しており他の診療科と連携処置を要する方。
●う蝕、義歯などの治療に関しては、一般の開業医院では治療が困難な全身疾患を有する方のみを対象としています。当科受診後、開業医での治療が妥当と判断した患者さんには、こちらから適切に地域の開業医を紹介させて戴きます。
主な対象疾患
口腔腫瘍(舌、歯内、口蓋、頬粘膜、口唇など)、嚢胞、顎変形症、顎関節症、外傷(軟組織、歯牙、顎骨骨折など)、顎骨炎、口腔粘膜疾患、唾液腺疾患、有病者および感染症者の歯科治療
主な疾患の診療実績
代表的疾患の年間患者数
初診 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
---|---|---|---|
埋伏歯 | 303 | 320 | 318 |
顎顔面外傷(歯の外傷を含む) | 101 | 150 | 135 |
炎症(智歯周囲炎を含む) | 114 | 90 | 146 |
良性腫瘍 | 139 | 127 | 150 |
悪性腫瘍 | 104 | 111 | 118 |
嚢胞 | 44 | 91 | 103 |
顎関節疾患 | 70 | 94 | 74 |
唾液腺疾患・唾石 | 9 | 37 | 28 |
顎変形症 | 19 | 8 | 13 |
口腔粘膜疾患 | 241 | 280 | 311 |
その他(歯科疾患を含む) | 860 | 610 | 790 |
計 | 2004 | 1918 | 2186 |
口腔機能管理 | 191 | 278 | 357 |
病棟患者統計(2017年1月~2019年12月)
2017年 | 2018年 | 2019年 | ||||
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入院 | 手術 | 入院 | 手術 | 入院 | 手術 | |
悪性腫瘍 | 148 | 114 | 142 | 100 | 145 | 104 |
(うち再建症例) | 59 | 38 | 50 | |||
良性腫瘍 | 22 | 22 | 16 | 16 | 19 | 19 |
上顎洞疾患 | 10 | 10 | 17 | 17 | 8 | 8 |
炎症 | 6 | 0 | 14 | 3 | 6 | 2 |
嚢胞 | 24 | 24 | 30 | 30 | 18 | 18 |
外傷 | 4 | 4 | 5 | 3 | 7 | 5 |
粘膜疾患 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
唾液腺疾患 | 3 | 3 | 2 | 2 | 4 | 4 |
有病者歯科・抜歯 | 8 | 8 | 23 | 23 | 13 | 13 |
顎変形症 | 7 | 7 | 5 | 5 | 5 | 5 |
顎関節疾患 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
その他 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
計 | 234 | 194 | 254 | 199 | 226 | 178 |
病床稼働率(当科) | 88.90% | 87.00% | 82.80% | |||
(病院) | 83.40% | 85.10% | 82.30% |
※再建には植皮等を含む
特殊医療(先進医療を含む)
当科のテーマとして学会報告している臨床研究
- 口腔がんの治療法確立に関する臨床的、病理組織学的および画像診断的研究
- 口腔がんに対する重粒子治療の確立に関する基礎的、臨床的研究
- 口腔がんの再建法に関する基礎的、臨床的研究
- 口腔がんの術後管理に関する臨床的研究
- 上顎洞疾患の治療法確立に関する臨床的、病理組織学的研究
- Apical microsurgeryの歯根嚢胞治療への応用に関する基礎的、臨床的研究
- 各種口腔疾患の発生機序と治療法に関する基礎的、臨床的研究
- 放射線照射と唾液分泌能の関係に関する基礎的、臨床的研究
- 顎変形症の外科的治療後の美容的評価に関する臨床的研究
- 顎骨壊死・骨髄炎の発症機序とその治療に関する臨床的研究
- 周術期口腔機能管理に関する臨床的研究
専門外来・特殊外来
口腔腫瘍外来
-群馬大学口腔癌治療プロトコール-
口腔がんの治療成績は、国内でも海外でも、頸部リンパ節転移のない症例では腫瘍の最大径にかかわらず5年制御率は約95%であるのに対し、頸部リンパ節転移症例では62%程度です.群馬大学歯科口腔・顎顔面外科では、原発巣切除法の改良と頸部リンパ節転移症例を如何に治療するかの課題を克服する必要性から、群馬大学口腔癌治療プロトコールを作成し、2010年より治療を開始しました。
その結果2017年12月までの8年間で、治療プロトコール完遂症例では、頸部リンパ節転移のない症例では5年制御率は100%, 頸部リンパ節転移症例でも92%、局所再発率0.4%の治療成績を得ることができました。ただし、治療プロトコール未完遂の頸部リンパ節転移症例の5年生存率は約50%であり、この治療成績改善が今後10年のわれわれの課題であると考えています。
現在では、群馬県の口腔癌の約80%,さらには埼玉県北部の口腔癌患者が来院し、年間約110例、2015年、2020年は130例を超える患者さんが初診として来院しています。この患者数は、全国国公私立大学医学部附属病院の中では常に上位3施設に入る患者数です。
口腔がんは人間の顔の美容性やしゃべる、食べるなど、最も社会性に重要な領域が破壊されます。当科では形成外科と共同で微小血管吻合を用いた遊離組織移植を行なうことで、進展した口腔がんでも、術後の美容障害、機能障害を最小限に止める手術を実施しています。この手術の導入によって、早期の社会復帰すなわち社会的生命の維持と回復が可能になりました。
国際的な口腔がんの治療法の基本は手術です。医師・歯科医師と十分にコミュニケーションを取り、患者さん自身が納得した上で治療を受けることが重要です。
担当医:横尾教授、小川講師、全医局員
顎変形症外来
-美容的因子を重視した顎変型症治療を実施しています-
とてもひどい受け口(下顎前突)や出っ歯の人(上顎前突)、あごが歪んでいる人(上下顎非対称)、上下の前歯の間に大きな隙間のある人(開咬)などは、顎や骨の形や位置に問題がある場合があります。顎の骨自体に変形がある場合には、一般的な歯科矯正治療では治らないことが多く、顎の骨の手術が必要になります。この様な病態を総称して「顎変形症(がくへんけいしょう)」と呼んでいます。
顎変形症治療においては咬合関係(噛み合わせ)のみならず、美容性を意識した治療を心掛けています。それは、多くの患者さんの深層心理には「噛み合わせ」よりも「顎の美容性」に対するコンプレックスがあるからです。そのため、必ずしも咬合最優先、骨格の基準値を重視した治療を行なうとは限らないのが当科の特徴です。
患者さんそれぞれのCT画像から3次元実態モデルを作製して術前検討を行い、手術方法を決定し、安全な手術を心がけています。その結果、顎変形症手術最大の偶発症である術後の知覚神経麻痺(皮膚の触った感じの麻痺)の発生率の低下につながっています。
輸血はまず必要ありませんが、安全のための自己血(採血による自己の血液)を準備して対応しています。
治療には健康保険が適用されます。
担当医:横尾教授、高山講師(非常勤)、清水助教
上顎洞疾患外来
-群馬大学上顎洞疾患プロトコールによる新しい治療法を実施しています-
上顎洞が機能するための最も重要な組織は上顎洞粘膜であり、最も重要な生理解剖は自然口の開存です。すなわち、上顎洞炎(蓄膿症)治療の目的は、閉鎖腔となった上顎洞を開放し、換気能と排泄能を回復させ、病的粘膜を正常化させること、つまり環境の整備にあります。
これまで歯性上顎洞炎、つまり上顎(うわあご)の歯が原因で起こる蓄膿症では、原因歯を治療、ないしは抜歯し、その抜歯した穴から上顎洞を洗浄して、治らなければ手術を行なうことが治療の基本でした。
ここで患者さんとして注意しなければならないのは、現在でも、上顎洞機能を無視した、最も避けるべき手術、つまり上顎洞粘膜をすべて取り去る上顎洞根本手術(じょうがくどうこんぽんしゅじゅつ)が全国でまだ平然と行なわれているという事実です。自己防衛のひとつとして認識して下さい。
上顎洞根本手術は行なわないのが今の医療水準です。
また、なかなか治らない歯性上顎洞炎(難治性歯性上顎洞炎)は、歯の治療ではまず治りません。
群馬大学では歯性上顎洞炎の病態生理に基づいた治療法(群馬大学上顎洞疾患プロトコール)を実施し、2009年4月から2019年12月までに約900例の歯性上顎洞炎を治療し、完治率100%を達成しています。現在、この治療法の啓発、普及に努力しています。
担当医:横尾教授、小川講師、全医局員
顕微鏡歯科外来
-手術用顕微鏡を使って、治りにくい歯の根の治療を実施しています-
歯が原因で顎の中に膿の溜まる嚢ができる病気を歯根嚢胞(しこんのうほう)や根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と言います。歯根嚢胞や根尖性歯周炎の原因歯に対しての手術を歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)と言います。
歯根端切除術は一般的には肉眼的に行われていますが、その成功率(歯を残せる確率)は50%程度と高くはありません。
当科の顕微鏡歯科外来では全国の口腔外科に先駆けて顕微鏡視下で行なう歯根端切除術を導入しています。2007年から2018年までの12年間で252例の手術を行っており、成功率は1年では93%、10年でも75.4%と極めて良好な成績をおさめています。
大きな歯根嚢胞に対する治療は全身麻酔で行ないます。
全国で群馬大学歯科口腔・顎顔面外科がパイオニア的存在で、この治療法においても、上顎洞疾患治療同様に啓発、普及に努力しています。
担当医:小川講師、鈴木助教、山口助教、中原医員
顎骨壊死・骨髄炎外来
-骨粗鬆症の薬やがんの骨転移に対する薬を止めず、手術もせずに顎の骨の骨髄炎を治す外来です-
骨粗鬆症の薬や乳癌、前立腺癌などの骨転移のための薬の有害事象として発症する顎の骨の骨髄炎を治療する専門外来です。
基本的には骨粗鬆症の薬や骨転移のための薬は中止しないという「群馬大学顎骨壊死プロトコール」で対応しています。
プロトコールの一環として腐骨(腐った骨)は除去しますが、顎を取るような大きな手術は行なわずに多くの症例で治癒、症状の軽快が認められています。
これから骨粗鬆症や癌の骨転移治療を受ける患者さん、ないしは、現在治療を受けている患者さんの抜歯や口の中の手術でも、ステージ1、2の場合では口腔衛生状態を徹底的に改善させることで、約92%の患者さんに治癒または症状の改善が得られています。
担当医:栗原講師(非常勤)、清水助教、鈴木助教
口腔機能管理外来(口腔ケア外来)
-口腔内の衛生状態を改善するためのオーダーメイド外来です-
口腔衛生状態が不良になると、高齢者や全身状態が悪く免役能が低下した患者さん、さらには手術後の患者さんなどでは、口腔内の細菌が増殖し、敗血症、誤嚥性肺炎などの重篤な全身合併症を発症します。
抗がん剤や放射線治療では、非常に強い口腔咽頭粘膜炎が生じ、摂食機能が著しく障害されます。
口腔衛生状態の改善は手術を含めた病気の治療を最後まで行なうためにはとても重要で、そのお手伝いをオーダーメイドで行なう専門外来です。
担当医:浅見助教、金助教、歯科衛生士
医師紹介
氏名 | 職名 | 専門分野・資格 |
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横尾 聡 YOKOO Satoshi |
教授 (診療科長) |
【専門分野】 【資格】 |
小川 将 OGAWA Masaru |
講 師 |
【専門分野】 【資格】 |
金 舞 KIM Mai |
助 教 |
【専門分野】 【資格】 |
清水 崇寛 SHIMIZU Takahiro |
助 教 |
【専門分野】 【資格】 |
鈴木 啓佑 SUZUKI Keisuke |
助 教 |
【専門分野】 【資格】 |
山口 高広 YAMAGUCHI Takahiro |
助 教 |
【専門分野】 【資格】 |
浅見 拓哉 ASAMI Takuya |
助 教 |
【専門分野】 【資格】 |
武者 篤 MUSHA Atsushi |
助 教 (重粒子線医学研究センター) |
【専門分野】 【資格】 |
早田 麻衣 SODA Mai |
助 教 (病理診断学講座) (医学教育センター) |
【専門分野】 【資格】 |
柳澤 さくら YANAGISAWA Sakura |
医 員 |
【専門分野】 |
谷口 明慧 TANIGUCHI Akie |
医 員 |
【専門分野】 |
中原 航大朗 NAKAHARA Koutaro |
医 員 |
【専門分野】 【資格】 |
喜名 美香 KINA Mika |
医 員 |
【専門分野】 【資格】 |
金井 梢 KANAI Kozue |
医 員 |
【専門分野】 |
佐川 真実子 SAGAWA Mamiko |
医 員 |
【専門分野】 |
外来診療予定表
初診受付: 午前8時30分~10時30分まで(紹介状をお持ちください)
再診受付: 午前8時00分~11時00分まで(予約制)
ご不明な点は歯科口腔・顎顔面外科外来(TEL 027-220-8495 外来診療棟1階)までお問い合わせください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
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初診 | 初診 | 初診 |