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泌尿器科

診療案内

診療内容・診療方針

泌尿器科では、前立腺癌、膀胱癌および腎癌といった泌尿器科領域の悪性腫瘍をはじめとし、腎不全や血液透析から腎臓移植、さらに男性不妊、男性更年期および男性機能障害、排尿障害に関わる前立腺肥大症や尿失禁など、泌尿器科全般に対応できる施設として、群馬県の中心として機能しています。主な診療疾患に掲載されている疾患を中心に、あらゆる泌尿器科疾患に対応しております。
当科は大学附属病院であるため、新薬の治験を担当しています。前立腺癌に対する新規治療の試験に参加しています。専門外来の紹介のコーナーで説明していますので、関心のある方はご覧ください。

主な対象疾患
泌尿生殖器腫瘍

腎腫瘍、腎盂腫瘍、副腎腫瘍、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、尿道腫瘍、陰茎腫瘍、精巣腫瘍、前立腺癌、その他腫瘍

排尿機能障害

前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿失禁、夜尿症、間質性膀胱炎

尿路結石

腎結石、腎盂結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石

精巣機能障害

男子不妊、無精子症、乏精子症、クラインフェルター、男性ホルモン低下症、二次性徴障害

性機能障害

勃起障害、男性更年期障害

泌尿生殖器の炎症

腎盂炎、膀胱炎、前立腺炎、精巣炎、精巣上体炎、尿道炎

腎機能障害

腎炎、水腎症、腎不全、透析、腎移植

小児泌尿器疾患

膀胱尿管逆流、包茎、尿道下裂、停留精巣、その他の先天奇形

外傷等

腎外傷、精巣捻転、尿道外傷等

得意とする分野

当科では、泌尿器科悪性腫瘍、腎移植、男性不妊症、排尿機能、男性更年期障害などを専門としています。悪性腫瘍では前立腺癌の治療数は非常に多く、MRI所見に基づく診断、ロボット支援手術、重粒子線治療、新規薬剤を用いた薬物治療など、診断から治療まで総合的に行い開発治験にも多く参加してきました。腎癌ではロボット支援手術による部分切除から腹腔鏡下の全摘術、免疫チェックポイント阻害剤などの薬物治療にも慣れています。膀胱癌などの尿路上皮癌に対する手術、薬物治療も多く手がけています。腎移植は生体腎・献腎移植を日本臓器ネットワークとの連携で行っています。男性不妊症の原因の一つである精索静脈瘤に対する低侵襲手術は当院で得意とする分野です。

主な疾患の診療実績
代表的疾患の年間手術実績
術式 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
分類:腎
根治的腎摘除術(開腹) 1 1 3 3 3
腎部分切除術(開腹) 0 1 0 1 2
単純腎摘除術(開腹) 0 1 1 0 0
腹腔鏡下根治的腎摘除術 17 17 19 20 16
腹腔鏡下移植腎摘除術 5 5 5 6 4
RAPN(ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術) 32 44 40 39 41
RARN(ロボット支援腹腔鏡下腎摘除術) 5
開放腎生検 7 7 5 4 4
腎瘻造設術 10 22 14 14 15
分類:腎盂・尿管
腎尿管全摘除術(開腹) 8 11 5 1 1
腹腔鏡下腎尿管全摘除術 8 6 15 12 17
RANU(ロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術) 4
腹腔鏡下腎盂形成術 1 1 0 0 1
尿管ステント留置・交換 233 261 291 315 267
分類:副腎
腹腔鏡下副腎摘除術 5 3 2 5 12
RAA(ロボット支援腹腔鏡下副腎摘除術) 1
分類:膀胱
TUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術) 119 127 148 147 142
膀胱全摘除術(開腹) 12 10 11 14 5
腹腔鏡下膀胱全摘除術 2 14
RARC
(ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術)
1 1
膀胱尿管逆流防止術 0 1 0 0 0
分類:尿路変更
回腸導管造設術 10 9 12 14 18
代用膀胱造設術 0 0 0 0 2
尿管皮膚瘻造設術 3 1 1 1 3
分類:前立腺
HoLEP
(ホルミウムレーザー前立腺核出術)
19 10 8 7 6
TUR-P 0 1 0 1 2
RARP
(ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術)
39 30 24 29 47
前立腺生検 214 160 163 193 184
分類:精巣・陰のう
高位精巣摘除術 11 14 9 7 15
除睾術 12 13 6 6 14
精巣固定術(停留精巣) 0 1 0 1 1
精巣固定術(精巣捻転) 19 17 25 13 16
精索静脈瘤(低位静脈結紮) 24 31 36 23 27
分類:陰茎・尿道
環状切除(背面切開含む) 2 6 2 4 4
陰茎切除 1 2 2 2 2
内視尿道切開 3 2 7 1 6
分類:結石
TUL(腎盂・尿管結石) 10 14 8 13 8
TUL-BS(経尿道的膀胱結石砕石術) 10 5 8 14 6
経尿道的尿道結石摘除術 0 0 1 0 0
膀胱切石 1 0 0 0 0
分類:透析・腎不全
生体腎移植 5 5 5 6 4
献腎移植 1 1 0 1 0
内シャント造設術 15 14 23 20 13
CAPDカテーテル留置 1 3 0 0 0
分類:その他
後腹膜リンパ節郭清 1 3 4 0 1
TESE/MESA
(精巣内精子抽出/精巣上体精子吸引)
9 2 6 8 8
特殊医療(先進医療を含む)
重粒子線治療

限局性-局所進行性前立腺癌(病期Ⅰ-Ⅲ)に対する重粒子線(炭素イオン線)治療
群馬大学では、限局性前立腺癌に対する手術療法、低リスク前立腺癌に対するI125密封小線源永久挿入療法、中高リスク前立腺癌および局所進行性前立腺癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)、高線量率組織内照射(外照射併用)を行ってきました。
2008年10月、群馬大学医学部附属病院敷地内に重粒子線(炭素イオン線)照射施設が完成し、2010年3月から実際の癌治療を開始、前立腺癌に関しては、2010年6月より先進医療として治療を行ってきました。これまでに2913例(重粒子線全治療4704例の約60%、2021年3月末)の前立腺癌に対して治療を行っています。限局性-局所進行性前立腺癌に対する重粒子線治療は2018年4月から保険適応となりました。現在は前立腺癌根治放射線療法として多くの症例に対して選択されています。

重粒子線治療の特徴
通常のX線と比べて生物学的効果比(RBE)が高いため、X線には抵抗性を示す様な腫瘍に対しても高い抗腫瘍効果が発揮されることが期待されています。また、通常行われている高エネルギーX線は、人体を透過するのに対し、重粒子線は止めたい深さで止めることが可能です。従って周囲正常組織への線量を低く抑えることが可能であり、副作用の軽減が期待できます。
詳細については https://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/ をご覧ください。

ロボット支援腹腔鏡下手術

体腔(腹腔)鏡下手術は、開腹せずに体腔(腹腔)鏡で体腔内の様子をビデオスクリーンに写しだし、この画面を見ながら特殊な器具を使って手術を行う方法です。体腔鏡下手術ではお腹に0.5から1.5cm程度の数ヶ所の小さな穴を開けるのみで手術ができます。傷が小さいため、従来の開腹手術に比べて術後の痛みが少なく、美容上の利点もあります。開放手術に比べて短期間の入院ですみ、社会復帰も早くなる傾向にあります。開放手術に比べて腹腔内の癒着が起こりにくいともいわれ、今日では世界的に普及している手術です。
ロボット支援下手術は、基本的には従来の体腔(腹腔)鏡下手術と同じ手術手技ですが、ロボットの機器の助けを借りることにより、より安全かつ正確に手術を行うことが可能になります。ロボット支援下手術と言っても、ロボットが手術を直接行うわけではなく、医師がロボットを操作し手術を行います。
当院では、2014年6月より、群馬県で初めて、医療ロボット:da Vinci(ダ・ヴィンチ)Siサージカルシステムを用いた手術を、前立腺癌に対し開始しております。日本でも現在では前立腺癌手術のうち、多くがロボット支援下に行われるようになっております。利点として、従来の開放手術と比べ、傷が小さく、術中出血量が少ないため、術後の負担が少なく回復が早くなっております。視野の確保が良好で、正確で繊細な剥離、縫合が可能で、術後の腹圧性尿失禁の早期改善傾向を認めます。なお、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)は健康保険の適応となっております。当院での短期治療成績は以下で参照できます: The KITAKANTO Medical Journal 70巻(2020) 2号 p 83~94
また、2016年4月より腎腫瘍に対するロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術が保険収載され、当院でも同手術を開始しております。ロボットを使用することで、より正確で精緻な腫瘍の核出と腎実質縫合が可能となりました。
2023年5月よりda Vinci(ダ・ヴィンチ)Xiサージカルシステムを導入、6月よりda Vinci(ダ・ヴィンチ)Xサージカルシステムとの2台体制となり、より高精度な手術を行っております。腎腫瘍に対するロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除術、副腎腫瘍に対するロボット支援腹腔鏡下副腎摘除術、腎盂尿管癌に対するロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術、膀胱癌に対するロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術も保険適応となり、当院でも順次開始しております。

男性更年期障害
これまで、更年期障害は女性に特有の状態であると考えられてきましたが、男性も特に40歳台以後、ストレスの増加、各臓器機能の変調、社会的な環境や気分の変化などを背景として、抑うつ的な気分になったり、だるさや性機能障害が生じることがあり、男性更年期障害として注目されています。日本人男性では、男性ホルモン全体の低下は見られないのですが、活性型の男性ホルモンは加齢とともに低下することがわかっています。こうした内分泌環境の変化も男性更年期障害に重要な変化とされています。当院では、男性更年期障害に対する問診から、内分泌学的検査などを行い、ホルモン補充療法やカウンセリングなど適切な治療を提供します。

主な検査や医療設備

手術支援ロボット: da Vinci(ダ・ヴィンチ)Xi, X サージカルシステム

専門外来・特殊外来
前立腺

最近我が国で増加している前立腺癌をはじめとして、前立腺肥大症、前立腺炎の診断・治療をおこなっています。
前立腺癌診断については、前立腺特異抗原(PSA)値・超音波検査・直腸診所見をもとに生検が必要な方を選別し、MRI所見を参照して、年齢と前立腺重量を加味した多数箇所生検によって癌の診断を行っております。この生検による確定診断が必須です。癌が発見された場合には、画像診断技術を併用して病期診断を行い、個々の病状に合わせて、手術、放射線療法、ホルモン療法、を単独、あるいは組み合わせておこなっています。他院で生検された場合でも、群馬大学での治療を希望される場合は紹介頂ければ幸いです。生検時に採取した前立腺組織のプレパラートを可能な限り全ての方に持参頂くようにしています。
群馬大学の2018年院内がん登録では、605名でした。この中には、当院で新しく診断された患者さんや他院で診断された患者さんで治療を決める場合と、他院で治療中に当院での治療のため来院される患者さんがいます。いずれの場合にも、適した治療を患者さんと医療者で検討の上、行います。前立腺全摘術は2014年6月より、群馬県で初めて、医療ロボットda Vinci(ダ・ヴィンチ)Si サージカルシステムを用いた、ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術(RALP)を導入し260例を超えました。放射線療法は、組織内照射療法(ヨード125密封小線源療法、高線量率小線源療法)や強度変調放射線治療(IMRT)が可能な施設でしたが、2018年4月から重粒子線治療が保険適応となり、放射線治療の主体となっています。また、癌の性質がおとなしく、癌の量が少量と推定される場合には、監視療法とよばれる、厳重な経過観察も行なっています。転移がある場合には男性ホルモンを低下させるホルモン療法を主体として治療しますが、併用する薬剤に進歩が著しく、病状によって併用する薬剤を決めていきます。
進行性前立腺癌で、初期ホルモン療法に効果がなくなった場合を去勢抵抗性前立腺癌とよびます。全身療法としてホルモン療法に加えドセタキセルやカバジタキセルによる化学療法や、新規ホルモン剤による治療、さらに骨転移に対するラジウム223による治療なども行っております。がんゲノム診断を元に投与を行うオラパリブ内服による治療についても2021年春頃より開始しています。
前立腺肥大症手術ではレーザーによる前立腺核出術(HoLEP)を行っております。

<前立腺癌に対する新規薬剤の治験について>
群馬大学泌尿器科では、新しい前立腺癌に対する薬物開発に協力しています。現在、去勢抵抗性前立腺癌の薬物療法の治験に参加しています。

<進行性前立腺がんに対して新規治療が可能になりました>
前立腺癌は進行して見つかった場合には治療が難渋すること多く、最近では通常のホルモン療法に新規のホルモン剤を併用して治療する場合があります。進行している場合、画像や病理の所見から、患者さんの病状が大きくことなることが分かってきています。また、初期ホルモン療法に抵抗性となった去勢抵抗性前立腺癌の治療も多数行ってきました。さらに新薬の開発試験に参加し、治療経験が蓄積されてきています。全ての方が全ての薬剤に適しているわけではありませんが、たとえ進行しても治療選択肢が増えたことになります。当院で治療されている方には担当医から説明しますし、他院で治療されている方で、現在の病状が心配な方は、群馬大学泌尿器科を受診してください。紹介状を持参していただければいつでも診察いたします。また、新薬の開発もさらに進んでいます。新薬の治験には適応となる場合にはお話しています。

膀胱癌、腎盂・尿管癌

膀胱癌は泌尿器系の癌の中で前立腺癌に次いで頻度の高い癌です。初期の症状として血尿がみられる事が多く、徐々に頻尿や排尿時痛などの症状も起こすことがあります。
また、膀胱と腎盂・尿管の粘膜は同じ尿路上皮という細胞で覆われており、腎盂・尿管に発生する癌のほとんどが膀胱癌とおなじ尿路上皮癌という組織型を示します。

<診断>
初診の患者さんにはまず内視鏡(膀胱鏡)検査を行い、必要に応じて、腎エコー、CTスキャン、骨シンチグラフィ等を行い、膀胱癌の病期を把握します。
腎盂・尿管癌が疑われる場合は腎エコー、CTスキャンなどの画像診断の他、必要に応じて内視鏡下に腎盂・尿管にカテーテルを挿入して造影検査を行ったり、尿管鏡という細い内視鏡で腎盂・尿管の観察や生検を行い診断します。

<膀胱癌の治療>
膀胱癌は、癌の広がりの状況により、大きく治療法が異なります。筋層までひろがっていない非筋層浸潤膀胱癌では、経尿道的な内視鏡手術を行い、病理所見によって経過観察したり、抗癌剤やBCGの膀胱内注入療法を併用することもあります。非浸潤癌で内視鏡的に完全切除した場合でも膀胱癌は再発を繰り返しやすい性質があります。そのため、外来での定期膀胱鏡検査などが必要で、繰り返し治療を行う場合もあります。非筋層浸潤性膀胱癌に対して、平成29年9月にアミノレブリン酸を用いた光線力学診断を併用した内視鏡手術が承認され、当院でも令和3年度から使用を開始しております。アミノレブリン酸を内服後に特殊な光をあてると癌細胞の部分だけが赤く光って見え、肉眼では判別しづらい癌組織の部分も確認することができるため、取り残しが少なく再発のリスクが抑えられます。ただし、炎症がある部分などでは擬陽性を生じることがあり、光線過敏症、血圧低下などの副作用もあるために、使用適応がある方は慎重に判断します。非筋層浸潤性膀胱癌でも、BCGによる治療に抵抗性となった場合、上皮内癌の成分を含む再発を繰り返すような場合には、後述の筋層浸潤性膀胱癌と同様に、膀胱全摘除術が推奨されることがあります。
筋層浸潤膀胱癌の場合、内視鏡手術により病理診断を行った上で膀胱全摘除術を中心に治療を進めます。進行の度合いによっては全身化学療法や放射線療法などを併用した集学的治療を行います。当院では膀胱全摘除術による手術療法や全身化学療法、放射線療法を患者さんの病状に応じて選択して行っています。
転移を有する膀胱癌の場合、全身化学療法、免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法を中心とした集学的治療を行います。最近では、化学療法や免疫療法に抵抗性となった膀胱癌を含む尿路上皮癌に対して、抗体薬物複合体を用いた治療が保険適応となり、当院でも使用しております。

<腎盂・尿管癌の治療>
転移のない腎盂・尿管癌の治療は一般的には腎尿管全摘除術という手術療法が行われます。
リンパ節隔清を必要とする癌に対しては開腹での手術を行っていますが、高齢の方、限局した癌、非浸潤癌と思われる方に対しては、術後の回復が早い内視鏡(腹腔鏡)併用手術を行っています。手術が適応にならない遠隔転移を有するような腎盂・尿管癌については全身化学療法、免疫療法、放射線療法を単独あるいは組み合わせて治療を行います。膀胱癌と同様に、化学療法、免疫療法に抵抗性となった腎盂癌・尿管癌に対して、抗体薬物複合体を用いた治療を行っています。

腎腫瘍

腎癌(腎細胞癌)を中心に、良性の腎腫瘍を含めて診断および治療を行っています。近年腎癌は人間ドックや、他疾患の検査中に見つかることが多く、自覚症状のない早期の腫瘍が多い傾向にあります。腎癌の治療は、手術治療を中心に、現在は腹腔鏡下手術を積極的に行い、患者さんの負担軽減を心がけています。小さな腎癌であれば腎部分切除により、腎機能の温存も可能です。2016年から手術支援ロボットであるダヴィンチ™を用いたロボット支援腹腔鏡下腎部分切除が保険収載となり、当院でも導入しています。腫瘍の状態にもよりますが、ご高齢の方や、合併症があり全身麻酔下の手術が困難な場合は、局所麻酔下に体外より針を刺して腫瘍のみを凍らせる、凍結療法を行うことも当院では可能です(放射線診断核医学科紹介)。病気の進行に応じて、インターフェロンや分子標的薬を用いた集学的治療も行っており、すべての病状に対応可能です。また最近では新規治療薬である免疫チェックポイント阻害薬による治療も行っており、ニボルマブ単剤治療、イピリムマブとニボルマブの免疫チェックポイント阻害薬2剤を併用した治療、ペムブロリズマブとアキシチニブ、アベルマブとアキシチニブの免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬の併用療法も導入しています。

精巣腫瘍

精巣腫瘍の発生率は、人口10万人あたり1-2人と稀な疾患です。発生率が最も多いのが20-30歳代ですが、これらの年代における悪性新生物の中では最も頻度が高いです。症状は痛みを伴わない陰嚢内容の腫大やしこりが主ですが(痛みを伴うケースもあります)、既に転移を起こしていると様々な全身症状が出てきます。診断は患部の触診と超音波検査、レントゲン検査(CTスキャン、胸部単純撮影)、血液中の腫瘍マーカー測定などを行います。診断後、まず高位精巣摘除術(鼠径部に切開をおき、精巣を精索とともに摘除)を行います。その後、摘出病変の病理診断と画像検査、腫瘍マーカー測定結果をもとに病期診断を行い、これに基づいて方針を決めています。追加で行う治療方法として、抗がん剤による化学療法、手術療法、放射線療法があり、これらが組み合わされることもあります。また病期診断時に転移のない病期Ⅰの患者さんでは、経過観察を選択する場合もあります。近年では化学療法の進歩に伴い、転移を有する進行症例に限っても80%以上で根治しています。一方で、こうした治療に抵抗する難治症例も存在し、更なる治療成績の向上が望まれます。現在、こうした症例に新規抗がん剤の使用も可能となり、良好な治療成績を治めています。

腎移植・腎機能障害

小児から成人までの急性・慢性腎不全の患者さんの保存的治療、透析療法(血液透析・腹膜透析)、腎移植療法(生体腎移植・献腎移植)に、腎臓内科・小児科と連携しながら、対応しています。手術としては、腎移植術、腹腔鏡下ドナー腎摘術、内シャント作成術、腹膜透析カテーテル留置術・開放性腎生検などを行なっております。生体腎移植に関しては、レシピエントの適応評価は当科、ドナーの適応評価は腎臓内科により行い、両科のカンファレンスで、症例検討することで、より安全な移植を目指しております。また、遺伝性腎疾患である、結節性硬化症に合併した腎血管筋脂肪腫や多発性嚢胞腎に対する薬物療法も行なっております。特に、結節性硬化症に関しては、腎だけでなく、様々な随伴疾患に対応するため,関連する診療科(泌尿器科,皮膚科,神経内科,呼吸器内科,脳神経外科,脳神経内科、小児科,精神科,眼科,歯科口腔外科)が連携し,院内で診療チームを作り、検査,診断,治療を行っています。また、当院の人工腎臓センター(透析室)は、泌尿器科が担当しており、血液透析だけでなく、様々な血液浄化療法(血漿交換、顆粒球吸着除去療法、腹水濾過濃縮再静注法など)も行っております。

排尿機能

排尿障害には、尿が近い、尿を我慢するのがつらい、尿をもらしてしまうといった蓄尿障害と、尿の勢いが弱い、尿をするに時間がかかる、尿の線が細い、尿の切れが悪いといった排出障害があり、両方を合併することもあります。
排尿障害の原因は様々です。子どもにおけるおねしょ、神経因性膀胱(脳・脊髄・末梢神経の病気が原因で起る膀胱・尿道の機能的障害)や女性に多い腹圧性尿失禁、中高年男性における前立腺肥大症などが代表的な病気です。原因となる病気によって治療法が違いますので、適切な治療のためには正確な診断が必要です。
排尿機能外来では、排尿機能検査(尿流検査、残尿検査、膀胱内圧検査、内圧尿流検査、括約筋筋電図、排尿日誌など)を行い、排尿障害の原因を探索し、適切な治療を開始することを目的としております。

不妊症・性機能

現在生殖年齢カップルの8-15%が不妊症であり、不妊において男性側因子の関与は約50%であると言われています。男性不妊症の原因の90%以上は精巣での造精機能障害ですが、その50-60%は原因の特定できない特発性で、現在の医療では明確な治療法が確立されていません。造精機能障害の原因として次に多いのが、約30%を占める精索静脈瘤で、手術により治療が可能です。手術は局所麻酔下に低侵襲で行える顕微鏡下低位結紮術を施行しています。精索静脈瘤手術では、温存する動脈の同定が困難な場合がありますが、当科では手術用蛍光顕微鏡を導入し、手術中に蛍光血管造影を行い、確実な動脈温存を可能としています(別記1)。また産婦人科と連携し、外科的に顕微授精に供する精子採取を行っています(別記2)。
男性ホルモンの分泌は間脳-下垂体-精巣系のホルモンバランスより制御されており、この系のいずれかに障害を来すと二次性徴が欠如したり、男性ホルモンの低下による種々の症状を引き起こします。原因には染色体異常による先天的なものや下垂体手術後など後天的な原因によるものがあり、当外来ではその診断と治療を行っています。障害部位により下垂体ホルモンあるいは男性ホルモンの補充を行います。

別記1:顕微鏡下低位結紮術について
精索静脈瘤は男性不妊症原因の20-30%を占める疾患で、解剖学的な理由によりほとんどが左側に認め、逆流を防止する静脈弁の異常により生じるとされています。本疾患は外科的に治療が可能で、静脈を処理する部位によりいくつかの術式がありますが、近年では精巣に近い浅鼠径輪の末梢で顕微鏡下に静脈瘤血管を処理する低位結紮術が、低再発率と日帰り手術も可能な低侵襲性から主流になりつつあります。本術式では、拡張した静脈の間に存在する非常に細い動脈を顕微鏡下に温存しなくてはならず、脈管同定の困難さ、手技の困難さが普及を妨げています。当科では本手術で初めて、術中にインドシアニングリーン(ICG)と言う試薬を用いて動脈を可視化し、迅速で確実な動脈同定・温存を可能としています。ICGを注射後に近赤外光を当て、特殊なカメラで観察すると、血管が蛍光を発し認識されます。当院で医師主導臨床研究として、有用性、安全性を証明し、報告しています(柴田ら、J Invest Surg, 2016)。さらに多数例の検討では、ICGの使用による迅速な動脈同定による手術時間の短縮、さらには非常に細い動脈も可視化されることによる動脈温存本数の増加に役立つことがわかりました。(栗原ら、J Invest Surg, 2020)。当院で男性不妊症に対して本手術を受けられた方の約70%に精液所見の改善を認めています。
本手術は、原則として局所麻酔で行い、現時点では1泊入院で行っていますが、今後日帰り手術で行うことを検討しています。手術の傷は左足付け根の内側に3㎝程度で、体毛に隠れる部分ですので目立ちません。手術後、一時的にリンパのうっ滞による陰嚢水腫を認めることがありますが、1-2週間以内には消失します。
なお、本手術におけるICGの使用は、当院での有用性、安全性報告も参考にされ、2018年より保険診療で認められました。

別記2:精子採取術
射出精液に精子が認められない方に対しては、手術により直接精巣や精巣上体から精子を採取する方法があります。採取した精子を用いて、顕微授精による体外受精を行います(産婦人科で施行)。手術は原則として1泊2日の入院で、全身麻酔下に行っています。本手術により全ての方で精子が得られるわけではなく、脳の下垂体という臓器から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の値がある程度指標になります。

尿路結石

尿路結石は頻度の高い疾患で、生涯罹患率は約5%といわれています。当院では、腎臓、尿管、膀胱の尿路結石に対しての診断、治療、経過観察を行っています。自然排石が期待できない結石に対しては、内視鏡およびホルミウムレーザーを用いた経尿道的結石破砕術を中心に治療を行っています。

小児泌尿器

小児泌尿器は、停留精巣、水腎症、膀胱尿管逆流症など、手術による治療が必要な先天性疾患が対象となります。多くの患者さんが小児科からの紹介という形で受診されています。停留精巣、膀胱尿管逆流症、また緊急手術としての精巣捻転症も含め、年間10例程度手術を行っています。小児科、麻酔科などと連携し、安全に手術が行えるよう十分に配慮しています。
当院で手術ができない疾患については、他の病院を御紹介することもあります。

男性更年期(LOH症候群)

これまで更年期障害は女性に特有の病態であると考えられてきましたが、男性も40歳台以後現れてくる男性機能の低下や不定愁訴の中に更年期障害によるものがあります。加齢に伴い、ストレスの増加や各臓器機能の変調、社会的な環境や気分の変調を背景として内分泌環境の変化も影響し生じると考えられています。具体的に動悸やのぼせ、倦怠感、筋力低下、集中力の低下、イライラ、性欲低下や勃起障害などの症状はないでしょうか。近年、加齢に伴う血中男性ホルモン低下に基づく症候群として、LOH症候群:late-onset hypogonadism syndromeと呼ばれ、注目されています。問診や血中男性ホルモン濃度を測定して体全体の評価を行い、血中男性ホルモンが低い場合には男性ホルモンの補充により症状の改善が期待できます。必要に応じて他科の医師とも相談しながら、薬やカウンセリングなど適切な治療を提供します。

医師紹介

氏名 職名 専門分野・資格
鈴木 和浩
SUZUKI
Kazuhiro
教 授

【専門分野】
泌尿器腫瘍

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本透析医学会 認定医・指導医、
日本内分泌学会 内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、
暫定教育医、
臨床研修指導医、
日本がん検診・診断学会認定 がん検診認定医

松井  博
MATSUI
Hiroshi
講 師
(重粒子線医学センター)

【専門分野】
前立腺癌、腎細胞癌

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、
臨床研修指導医、
泌尿器科da Vinci 支援手術教育プログラム修了

小池 秀和
KOIKE
Hidekazu
講 師

【専門分野】
前立腺癌

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本内分泌学会 内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、
臨床研修指導医、
泌尿器科da Vinci 支援手術教育プログラム修了、
日本ロボット外科学会 専門医、
泌尿器ロボット支援手術 プロクター認定医

関根 芳岳
SEKINE
Yoshitaka
講 師

【専門分野】
前立腺癌、腎不全治療(腎移植、透析)、小児泌尿器

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本透析医学会 認定医・指導医、
日本内分泌学会 内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、
日本腎臓学会 腎臓専門医・指導医、
日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医、
日本臨床腎移植学会 腎移植認定医、
日本移植学会 認定医、
日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医、
日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器腹腔鏡)、
臨床研修指導医、
泌尿器科da Vinci 支援手術教育プログラム修了、
泌尿器ロボット支援手術 プロクター認定医、
身体障害者福祉法指定医(膀胱又は直腸機能障害)、
身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害)、
難病指定医、
日本腎代替療法医療専門職推進協会認定 腎代替療法専門指導士、
日本がん検診・診断学会認定 がん検診認定医

新井 誠二
ARAI
Seiji
講 師

【専門分野】
泌尿器癌

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会認定 泌尿器腹腔鏡技術認定医、
日本内視鏡外科学会認定 技術認定医(泌尿器腹腔鏡)、
日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医、
臨床研修指導医、
泌尿器科ロボット支援手術教育プログラム修了、
身体障害者福祉法指定医(膀胱又は直腸機能障害)

野村 昌史
NOMURA
Masashi
病院講師

【専門分野】
腹腔鏡手術、腎細胞癌、泌尿器腫瘍

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医、
がん治療認定医、
日本内視鏡外科学会 技術認定医 (泌尿器腹腔鏡)、
臨床研修指導医、
泌尿器科da Vinci 支援手術教育プログラム修了

藤塚 雄司
FUJIZUKA
Yuji
助 教

【専門分野】
泌尿器一般、泌尿器腫瘍、腹腔鏡手術

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本泌尿器内視鏡学会認定 泌尿器腹腔鏡技術認定医、
日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医、
日本がん検診・診断学会認定 がん検診認定医、
泌尿器科ロボット支援手術教育プログラム修了、
臨床研修指導医、
身体障害者福祉法指定医(膀胱又は直腸機能障害)

宮澤 慶行
MIYAZAWA
Yoshiyuki
助 教

【専門分野】
前立腺癌、泌尿器腫瘍

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本透析医学会 認定医・指導医、
日本内分泌学会 内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、
日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医、
臨床研修指導医、
日本がん検診・診断学会 がん検診認定医、
泌尿器科ロボット 支援手術教育プログラム修了、
日本内視鏡外科学会 技術認定医 (泌尿器腹腔鏡)

大津   晃
OHTSU
Akira
助 教

【専門分野】
泌尿器腫瘍

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
日本泌尿器科学会 指導医、
日本内分泌学会 内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、
日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医、
臨床研修指導医、
日本透析医学会 認定医、
日本泌尿器内視鏡学会認定 泌尿器腹腔鏡技術認定医、
日本内視鏡外科学会 技術認定医 (泌尿器腹腔鏡)

澤田 達宏
SAWADA
Tatsuhiro
助 教

【専門分野】
泌尿器科一般

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医、
臨床研修指導医

小野瀬 舞
ONOSE
Mai
助 教

【専門分野】
泌尿器科一般

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医

辻  裕亮
TSUJI
Yusuke
助 教

【専門分野】
泌尿器科一般

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医

前野 佑太
MAENO
Yuta
助 教

【専門分野】
泌尿器科一般

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医

野村  恵
NOMURA
Megumi
医 員

【専門分野】
泌尿器科一般

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医

綿貫  翔
WATANUKI
Sho
医 員

【専門分野】
泌尿器科一般

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医

金山あずさ
KANAYAMA
Azusa
医 員

【専門分野】
泌尿器科一般

【資格】
日本専門医機構 泌尿器科専門医

中野 裕美
NAKANO
Hiromi
医 員

【専門分野】
泌尿器科一般

中澤 峻
NAKAZAWA
Shun
医 員

【専門分野】
泌尿器科一般

清水 孝倫
SHIMIZU
Takanori
医 員
(シニアレジデント)

【専門分野】
泌尿器科一般

須長 理沙
SUNAGA
Risa
医 員
(シニアレジデント)

【専門分野】
泌尿器科一般

五十嵐 彩夏
IGARASHI
Ayaka
医 員
(シニアレジデント)

【専門分野】
泌尿器科一般

清水 湧作
SHIMIZU
Yusaku
医 員
(シニアレジデント)

【専門分野】
泌尿器科一般

原嶋 修吾
HARASHIMA
Shugo
医 員
(シニアレジデント)

【専門分野】
泌尿器科一般

外来診療予定表

初診受付: 午前8時30分~10時30分まで(紹介状をお持ちください)
再診受付: 午前8時00分~11時00分まで(予約制)
ご不明な点は泌尿器科外来(TEL 027-220-8317 外来診療棟3階)までお問い合わせください。

泌尿器科外来
027-220-8317

外来は、初診患者さんの受付を月曜日から金曜日の午前中毎日受け付けております。
かかりつけの先生からの紹介状があれば、効率的に診断から治療にすすめますので、紹介状の持参をお願いします。紹介状をお持ちでない方の受診は原則お受けしておりません。
何かお困りのことがあればお気軽にご相談ください。

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
初診・再診 担当医 担当医 担当医 担当医 担当医
術前外来 担当医 担当医 担当医 担当医 担当医
透析 関根 関根 野村 関根 関根
専門外来 AM 前立腺
(小池)
(新井)
腎機能/腎移植/小児
(関根)
腎腫瘍
(野村)
膀胱腫瘍
(藤塚)
前立腺
(鈴木)
(松井)
[予約のみ]
前立腺
(松井)
(小池)
膀胱腫瘍
(新井)
腎腫瘍
(野村)
前立腺
(鈴木)
(松井)
[予約のみ]
前立腺
(松井)
(関根)
膀胱腫瘍
(大津)
PM 腎機能/腎移植
(関根)
腎腫瘍
(野村)
膀胱腫瘍
(新井)
不妊/性機能
(青木)
男性更年期
 
腎腫瘍
(岡村※)
[第2, 4週]
精巣腫瘍
(中里※)
(西井※)
[第1,3,5週]
排尿機能
(大津)

◆ 担当医は固定しておりません。
◆ 学会・手術等の理由で、休診となったり担当医師が変更となることがあります。
※非常勤講師

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